ライバー事務所の「専属」とは?掛け持ちできる範囲の確かめ方
この記事の内容(13項目)
「専属」には、決まった中身がありません。法律や資格で定義された言葉ではなく、事務所ごとに別の意味で使われています。何が縛られるかは、言葉ではなく、自分が交わした契約の文言で決まります。掛け持ちができるかどうかも同じで、答えは自分の契約書と、使うアプリの規約にあります。
だから「専属だから無理」とあきらめる必要も、「大丈夫と言われたから平気」と安心する必要もありません。確かめる場所と順番が分かれば、どちらも文面で確かめられます。
「専属」が縛りうるのは、この4つ
縛りうるものは、次の4つのどれか、またはその組み合わせです。契約の言葉のままだと読み流すので、生活の場面に置き換えます。
| 縛られうるもの | 生活の場面に置き換えると |
|---|---|
| 他のアプリでの配信 | 別のアプリでも配信したくなったとき、できるか |
| 他の事務所への所属 | 合わなかったとき、別の事務所に移れるか。空ける期間はあるか |
| 個人で受ける仕事 | 知人のイベントで歌ってほしいと頼まれたとき、自分で受けられるか |
| 名前とアカウントの扱い | やめたあとも、いまの配信名とアカウントを使い続けられるか |
4行目は、入るときには気にならず、やめるときに初めて効く項目です。配信名には、続けた分だけリスナーとの積み重ねが乗ります。その名前を事務所のものとして扱うのか、本人のものとして扱うのかは、契約によって違います。
1行目と2行目は、「いまはそのつもりがない」ときほど流しがちです。専属の約束が効いてくるのは、気持ちが変わったときです。いまの気持ちではなく、気持ちが変わったときにどうなるかで読んでください。
面談や問い合わせでは、この表の右の列をそのまま口に出します。「専属というのは、別のアプリで配信したくなったらできない、ということですか」。場面で聞けば、答えも場面で返ってきます。
同じ「専属」が、制限の意味にも待遇の意味にもなる
「他のアプリでは配信しないでください」という制限の意味で使う事務所があります。「専属の担当が付いて手厚く見ます」という待遇の意味で使う事務所もあります。両方を含んでいることもあります。
「専属ライバー募集」という文字だけでは、どの意味なのか外からは分かりません。ライバー事務所には共通の契約書のひな形がなく、言葉の使い方もそろっていないからです(事務所の仕組みはライバー事務所とはにあります)。「専属とはどういう意味ですか」と正面から聞くより、上の4つの場面で一つずつ聞くほうが、答えが具体的になります。
掛け持ちしたくなった場面で、確かめる場所が違う
| 場面 | 本当にやりたいこと | 確かめる場所 |
|---|---|---|
| 別のアプリも試したい | いまの活動に1つ足す | 自分の契約と、アプリの規約 |
| 配信以外の仕事が来た | 歌・声・イラストなどの依頼を受ける | 契約が対象にしている範囲 |
| いまの事務所が合わない | 実質、事務所を替えたい | 掛け持ちではなく、やめ方と移籍の手順 |
3行目に注意してください。不満があって「別の事務所にも入って様子を見たい」と考えるのは自然ですが、事務所を替えたいだけなら、掛け持ちは遠回りになりやすい道です。
最初の一歩は、自分の契約で許されているかを確かめること
基準になるのは、世間の慣行でも知り合いの体験談でもなく、自分が交わした契約です。ほかの人が大丈夫だったことは、自分も大丈夫だという根拠になりません。
- 契約書・加入時の規約を読み返す「専属」「他社」「事前の承諾」「配信活動以外」といった言葉を探します。書面を交わしていない場合は、加入時に同意した規約や、当時のやり取りの記録を遡ります。
- 読んでも分からなければ、事務所に聞く相談の形で聞くかぎり、責められる話ではありません。
- 返事を文章で残す口頭の「大丈夫ですよ」だけで進めません。担当者は変わることがあり、そのとき手元に残るのは文面です。
「◯◯というアプリでの配信(または「◯◯というお仕事の依頼」)を考えています。いまの契約で問題ないか、確認させてください。いまの配信の曜日と時間を変えるつもりはありません。」許可をお願いする文ではなく、確認の連絡です。
聞けない相手なら、それ自体が判断材料です。聞いたら怒られそうだと感じる関係、聞いてもはぐらかされる関係は、掛け持ちより先に、その所属を続けるかどうかの材料になります。契約書のどこを読むかは契約書チェックの8項目にあります。
別のアプリも試したいときは、アプリ側の決まりも見る
事務所に所属している人が別のアプリで配信することについて、アプリの側に定めがある場合があります。内容はアプリごとに違うので、やりたいアプリの公式ヘルプと利用規約で確かめてください。アプリをまたいで配信するときの考え方は配信アプリの掛け持ちにあります。
事務所に伝えるときは、「よそでもやりたい」ではなく「◯◯を試したい。いまの配信の曜日と時間は変えない」と、いまの活動への影響まで含めて話します。事務所が気にすることの一つが、活動が分散していまの配信が止まることだからです。
配信で効くのは曜日と時間の固定です。掛け持ちを考えるときは、契約とアプリの規約を確かめたうえで、いまのアプリの枠は動かさず、新しいアプリは別の曜日に足すなど、無理なく続けられる配信予定を先に組んでから始めてください。
配信以外の仕事が来たときは、契約の範囲を見る
契約が対象にしているのが配信活動だけなのか、活動全般なのかで答えが変わります。ここは自分で読んでも判断しにくい部分なので、依頼の内容を伝えて事務所に確かめるのが確実です。事務所が間に入ることで、依頼主とのやり取りが楽になることもあります。
依頼主には「事務所に確認するので数日ください」と伝えます。所属のある人に頼むなら、確認が入るのは依頼主にとっても想定の内です。確認の時間を嫌がる依頼主なら、その依頼自体を見直してください。
ここまで読んで、自分のケースが判断できないと感じたら、LINEで聞いてください。
LINEで相談するいまの事務所が合わないなら、掛け持ちではなく「やめてから入る」
同じアプリで2つの事務所に同時に所属できるかは、アプリの仕組みと契約で決まります。できない場合、別の事務所に入るには、いまの事務所を抜ける手続きが要ります。それなら最初から、やめてから入るほうが早く済みます。
- 不満の正体を切り分ける事務所そのものが原因なのか、収入が伸びない時期の問題なのか。事務所を替えても変わらないものを理由に動くと、次の場所で同じことになります。
- やめる手続きを順番どおりに進める所属中の報酬の精算など、順番を間違えると困る箇所があります。ライバー事務所をやめる手順を先に読んでください。
- 次を選ぶ同じ不満が出ない相手かを、面談で確かめます。移る順番はライバー事務所の移籍に、契約前に確かめる項目はライバー事務所の選び方にあります。
「次が決まるまで、いまの所属を保険に残したい」と考えていたなら、いったん個人に戻る道もあります。比べ方はライバー事務所に入るべきかにあります。
黙って掛け持ちを始めると、立場が悪くなる
「確認して断られたら困るから、黙ってやろう」はおすすめしません。法律の話の前に、構造の話です。
- 配信は公開の活動/声、話し方、時間帯、リスナーの顔ぶれ。隠しながら続けられるものではありません。
- 説明の順番が逆になる/先に話せば相談だったものが、見つかってからだと言い訳になります。
- 信頼の問題として残る/契約上は問題がなかったとしても、「黙っていた」という事実は消えません。
うっかり型もあります。入る前から使っていた別アプリのアカウント、たまにするゲーム配信、友人の配信へのゲスト出演。隠すつもりがなくても、事務所から見れば聞いていない活動になっていることがあります。心当たりがあるなら、指摘される前に自分から伝えてください。
黙って始めたことが契約違反にあたるかどうかは、契約書の条項と状況で決まります。違約金の話になったら、その場で払わず、契約書を持って消費生活センターに相談してください。法テラスや弁護士につないでもらうこともできます。
縛られる代わりに、何を受け取るのか
縛りだけを見ると、専属は損な条件に見えます。見るべきなのは、渡すものと受け取るものを同じ紙に並べたときの釣り合いです。
紙の左に、上の4つのうち自分に当てはまる縛りを書きます。右に、専属であることで受け取れるものを書きます。右側は募集ページの言葉ではなく、面談で「専属にすることで、事務所は何をしてくれますか」と聞いた答えを書きます。担当の付き方、相談できる頻度、企画への声のかかり方。具体的な答えが並ぶなら、検討に値する取引です。右側がふんわりした言葉でしか埋まらないなら、渡すものだけが具体的な取引だと紙の上で分かります。
この釣り合いは人によって変わります。他のアプリに興味がない人には軽い縛りで、いろいろ試してから決めたい人には重い縛りです。「専属じゃないほうが自由でいい」も半分しか合っていません。自由には、配信の設計もトラブルの判断も、全部自分でやるという意味が含まれます。
縛りの重さは、範囲と期間と抜けやすさで決まる
「他のアプリでは配信しない」という同じ約束でも、すぐやめられる契約の中にあるのと、長い期間の契約の中にあるのとでは重さが違います。実際の重さは、範囲に、期間と抜けやすさを掛け合わせたものです。
だから専属の説明を聞いたら、範囲とセットで「この専属は、いつまで続きますか」「期間が終わったら、自動で更新されますか」「やめたくなったら、どういう流れになりますか」まで聞いてください。更新のたびに選び直せる形なのか、何もしなければ続く形なのかで、「とりあえず入ってみる」の意味が変わります。
口頭の「専属だけど大丈夫」は、文面でもらう
「契約上は専属ですが、他のアプリも自由にやってもらって大丈夫です」「形だけなので気にしなくていいです」。担当者に悪気がなくても、このまま進むのはおすすめしません。口頭の説明は残らず、手元に残るのは契約の文言だからです。
その場で争う必要はありません。「いま言っていただいたこと、あとで読み返したいので、メッセージで送ってもらえますか」と頼みます。快く送ってくれるなら安心材料になります。渋られたら、その渋り方が口頭の「大丈夫」の重さを教えてくれます。送り先はふだんのLINEやメールで構いません。日付と、誰が、何について大丈夫と言ったのかが文字で残れば足ります。
「今日決めてくれるなら」と急がされたら、その時点で持ち帰ってください。
掛け持ちを断られたときの選択肢
- 理由を聞く/時間が分散するのが心配なのか、内容が競合するのか。分かれば形を変えた提案ができます。
- 範囲を絞って提案し直す/頻度を限る、ジャンルを限る、期間を区切って試す。
- 契約の更新まで待つ/更新は条件を見直す機会です。更新日をカレンダーに入れ、それまでに来た依頼や誘いを日付つきでメモしておくと、更新の面談で事実として話せます。
- その話を見送る/いまの所属で得ているもののほうが大きいなら、それも判断です。
- 所属を見直す/どうしてもやりたいことを契約が許さないとはっきりしたなら、順番どおりにやめて動けます。
断られたこと自体は、事務所の不誠実ではありません。契約で決めた範囲を守るのは、向こうにとっても仕事です。気をつけたいのは、理由を説明しないまま封じられる場合と、契約のどこにも書かれていない縛りをあとから持ち出される場合です。そのときは、やり取りを残して消費生活センターに相談してください。
よくある質問
「専属です」と言われましたが、契約書が見当たりません。
加入のときに同意した規約や書面のどこに書いてあるかを、事務所に聞いてください。口頭だけの専属なら、なおさら内容を文字で送ってもらいます。
専属でも、XやTikTokへの投稿はできますか?
契約によります。専属が配信アプリだけを指す場合も、SNSでの活動まで含む場合もあります。「配信の告知をXに投稿するのは大丈夫ですか」のように、やりたい場面をそのまま聞いてください。
意味をよく分からないまま、専属で契約してしまいました。
自分を責めなくて大丈夫です。同意した契約書や規約を読み直して、上の4つがどう書かれているかを確かめてください。読んでも分からなければ、消費生活センターに相談できます。
「専属のほうが待遇がいい」と言われました。
言葉だけでは比べられません。「具体的に何が変わりますか」と聞いて、渡すもの(縛り)と受け取るもの(待遇)を同じ紙に並べてください。
黙っていれば分からないのでは?
配信は誰でも見られる場所での活動です。分かるかどうかで考えるより、確かめて堂々とやれる形にするほうが、配信に集中できます。
- 「専属」に決まった定義はない。縛る範囲は、契約書と、同意した規約・やり取りで確かめる
- 縛られうるのは、他アプリでの配信/他事務所への所属/個人で受ける仕事/名前とアカウントの扱い
- 掛け持ちしたくなったら、契約とアプリの規約を確かめ、事務所に文面で聞く
- 事務所を替えたいだけなら、掛け持ちより「やめてから入る」
- 縛りの重さは、範囲と期間と抜けやすさで決まる
- 口頭の「大丈夫」はメッセージで送ってもらう。違約金の話はその場で払わず消費生活センターへ
契約前に確かめる項目の全体はライバー事務所の選び方、書面の読み方は契約書チェックの8項目にあります。
スカウトDMが来た、契約書を渡された、やめたいのに話が進まない。こういうときは、その場で決めないことがいちばん効きます。判断に困ったら聞いてください。
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