ライブ配信の掛け持ち|主と副を決めて、時間割と伝え方まで設計する実務ガイド
1つのアプリで配信を続けて、常連さんも少しずつできてきた。そうなると、別のアプリが気になり始めます。「あっちでもやれば、リスナーが増えるかもしれない」。掛け持ちを考え始めるのは、たいていこの段階です。
あるいは、もう2つ目を始めてしまって、回らなくなりかけている人もいると思います。片方の配信を休むたびに気まずい。どちらの常連さんにも、中途半端な顔をしている気がする。どっちも楽しかったはずなのに、時間割だけが手に負えなくなっていく。
掛け持ちを始めるかどうかの判断は、配信アプリの比較に書きました。まず1つで自分の型を作ってから、という結論です。この記事はその先の話です。実際に2つのアプリで配信すると決めた人のための、運用の設計図だと考えてください。
掛け持ちで最初に決めるのは「どちらを主にするか」です。主と副が決まると、時間割も、リスナーへの伝え方も、疲れたときに削る順番も、全部が決めやすくなります。逆に、両方を同じ熱量でやろうとすると、両方が中途半端になります。
最初に「主」と「副」を決める
掛け持ちの設計は、この一手から始まります。2つのアプリを対等に扱わない。どちらかを主、もう片方を副と、先に決めてしまいます。
理由は単純で、配信に使える時間と体力が2倍になるわけではないからです。いままで1つに注いでいたものを2つに分けるのだから、何も決めずに始めれば両方が薄まります。薄まった配信は、リスナーの側から見れば「前より楽しくなくなった配信」です。
主にするのは、いま常連さんが育っているほうであり、3ヶ月後も続けていたいほうです。副は、それを支える2本目です。役割が分かれると、日々の迷いが減ります。
| 主のアプリ | 副のアプリ | |
|---|---|---|
| 時間割 | 先に枠を確保する | 残った枠に入れる |
| イベント | 出ると決めたら本気で走る | 基本は見送る |
| 新しい企画 | うまくいったものだけ持ち込む | まずここで試す |
| 体調が悪い日 | 短くても枠は守る | 迷わず休む |
| 見直しの単位 | 3ヶ月 | 3ヶ月 |
4行目がいちばん効きます。疲れたときにどちらを削るかを、元気なうちに決めておく。これが主と副を分ける最大の目的です。その場で選ぶと、たいてい気まずさの少ないほうを休んでしまい、基準がぶれます。
副は「実験場」と考えると位置づけが安定します。新しい話題や企画は副で小さく試して、手応えのあったものだけを主に持ち込む。副が伸びなくても、主の練習になっているなら、役割は果たしています。
なお、主と副という区別は、自分の中の運用ルールです。リスナーに向かって「こちらは副です」と言う必要はありません。口に出せば、副の場所に来てくれている人をがっかりさせるだけです。区別は胸の内に置いたまま、目の前の配信はどちらも普段どおりにやります。
時間割は「曜日で分ける」か「時間帯で分ける」
主と副が決まったら、次は時間割です。分け方は2つしかありません。
- 曜日で分ける/月・水・金は主、火・土は副、のように曜日ごとに場所を固定します。1日1配信で済むので、生活に組み込みやすい分け方です。
- 時間帯で分ける/夜の本枠は主、朝や昼の短い枠は副、のように1日の中で分けます。毎日どちらにも顔を出せる反面、拘束時間は長くなります。
どちらでもかまいません。やってはいけないのは、その日の気分でどちらに行くかを決めることです。日によって場所が変わる配信者は、どちらのリスナーから見ても「いつ行けば会えるのか分からない人」になります。常連さんは、決まった時間に決まった場所にいる人のところにしかつきません。この仕組みは常連さんの作り方に書いたとおりで、掛け持ちでも変わりません。むしろ2つに分かれるぶん、固定の効きは掛け持ちのほうが大きくなります。
組む手順です。
- 主の枠を先に置くいままでの配信時間をそのまま動かさないのが基本です。主のリスナーの習慣を崩さないことを、何より優先します。
- 副の枠を空きに置く主と同じ曜日・同じ時間帯に重ねないこと。迷ったら、副は主より少ない本数から始めます。
- 何も置かない日を残す週7日をどちらかの配信で埋めないでください。予定のない日が、掛け持ちの安全弁になります。
- 時間割を両方のプロフィールに書く「月水金21時はこちら」と書いてあれば、リスナーは迷いません。
副の枠は、長さも控えめに始めてください。主と同じ長さで組むと、合計の配信時間が一気に膨らみます。短い枠でも、決まった時間に必ず開くことのほうが、長さよりずっと効きます。
そして、一度決めた時間割は少なくとも1ヶ月は動かさないでください。配信者にとっては小さな調整でも、リスナーにとっては「行ったのにいなかった」という体験になります。それが2回続くと、足が遠のきます。
リスナーには隠さない。ただし伝え方は規約を確認してから
掛け持ちを常連さんに隠すかどうか。結論は、隠さない、です。
隠しても、たいてい知られます。SNSのおすすめ、別アプリでの検索、そして声と話し方。見つけたリスナーが引っかかるのは「よそでも配信していたこと」ではなく、「自分たちに黙っていたこと」のほうです。知られてからの説明は、先に自分から伝える説明の何倍も難しくなります。時間割を決めた段階で、「別のアプリでも配信を始めます。ここの配信はいままで通りです」と自分の口から伝えてください。大事なのは後半です。リスナーの不安は「この場所が減らされるのではないか」に集中するので、主の枠が変わらないことを先に約束します。
「隠さない」と「配信の中で他のアプリへ誘導する」は別の話です。配信中に他のアプリ名を出すこと、あちらのIDを読み上げること、移動を呼びかけること。これらをどこまで認めるかは、アプリごとに規約が違います。ここで「大丈夫」とも「禁止」とも言い切れるものではないので、必ず両方のアプリの公式の利用規約とヘルプを確認してください。触れてしまうと、警告やペナルティの対象になりえます。
迷ったら、告知は配信の外に寄せるのが安全側です。SNSのプロフィールに両方の活動と時間割をまとめておき、配信そのものでは踏み込んだ誘導をしない。そのSNSの案内がどこまで認められるかも含めて、最終判断は公式の規約です。「他の配信者もやっているから大丈夫」は、根拠になりません。
伝えたあとは、両方に来てくれるリスナーも出てきます。ありがたい存在ですが、接し方に1つだけ注意があります。どちらかの配信の中で、もう片方の話題ばかりをしないことです。その場にいるのは、その場所を選んで来ている人たちです。行き来してくれる人には感謝を伝えつつ、配信そのものは、いま開いている場所の空気で進めてください。
名前を揃えるか、変えるか
2つのアプリで同じ名前・同じアイコンを使うかどうか。ここは、身バレへの考え方で答えが変わります。
| 同じ名前を使う | 別の名前にする | |
|---|---|---|
| リスナーの行き来 | 見つけてもらいやすい | ほぼ期待できない |
| 活動の積み上げ | 1人の配信者として貯まる | 2つに分かれる |
| 身バレしたとき | 両方まとめて特定される | 片方だけで止まる余地がある |
| 管理の手間 | 少ない | 2人分のキャラと記憶の管理 |
3行目が判断の中心です。名前を揃えると、検索で2つのアカウントが1本の線でつながります。つまり、片方の配信でこぼれた情報と、もう片方でこぼれた情報が、足し合わされて特定に使われます。それぞれの配信では気をつけていても、合わさると絞り込みは一気に進みます。
だから基本線はこうなります。リスナーに行き来してほしいなら同じ名前、身バレの防御を優先するなら別の名前。とくに、職場や家族に知られたくない事情を抱えている人は、分ける価値があります。身バレの経路の全体像は身バレ対策で確認してください。
ひとつだけ釘を刺しておくと、名前を変えても、声と話し方は同じです。別名の2つのアカウントも、聞き比べられれば同じ人だと分かります。別名は「検索ではつながらない」までの防御であって、完全な別人にはなれません。そこまで含めて、どちらの割り切りを取るかを決めてください。
収入も疲労も、「合算」で管理する
掛け持ちを始めると、2つのものが分散します。収入と体力です。どちらも、アプリごとにバラバラに見ていると足元をすくわれます。
まず収入です。2つのアプリからそれぞれ振り込まれるようになると、1つずつは小さな金額に見えます。ここに落とし穴があります。税金の判断は、アプリごとではなく、すべての収入を合算して考えます。片方ずつなら気にならない額でも、合わせると申告に関わる、ということが起こりえます。金額の線引きはこの記事では書きません。仕組みはライバーの確定申告といくらから申告が必要かで確認し、迷ったら税務署に問い合わせてください。日々やることは1つだけです。報酬の明細と振込の記録をアプリごとに残し、月に1回、1つの表にまとめる習慣をつけてください。
体力も同じです。1本1本の配信は軽くても、疲れは合算で溜まります。次のサインが出ていないか、月に1回、時間割とあわせて確かめてください。
- 配信の質が落ちている/準備なしで枠を開けて、とりあえず座っているだけの日が増えた。コメントを読み飛ばすようになった。
- どちらも義務になっている/「今日はどっちの日だっけ」と配信前に気が重い。楽しみだった枠が、こなす予定に変わっている。
- 休む言い訳を探している/体調や用事を理由に休む回数が、掛け持ちの前より明らかに増えている。
2つ以上当てはまるなら、減らす段階です。しんどさの正体の見分け方は配信がしんどいときに、心が削られているときの止まり方は配信でメンタルを病む前ににまとめています。
片方を畳むのは、失敗ではありません。試したうえで主に集約すると決めた、というだけのことです。踏ん切りがつかないときは、空いた枠の行き先を考えてください。その時間は消えるのではなく、主の配信と、配信の外の生活に返ってきます。畳むときの順番です。
- 畳むほうを決める数字ではなく、「どちらの配信前のほうが気が重いか」で決めて構いません。続くかどうかを最後に決めるのは、気持ちのほうです。
- リスナーに期日を伝える黙って消えないでください。「◯月いっぱいでこちらは減らします」と、行き先も含めて伝えます。伝え方が規約に触れないかは、ここでも確認します。
- 報酬の精算を確認する受け取っていない報酬の扱いを、やめる前に公式のヘルプで確認します。
- アカウントは残す削除まではしなくてかまいません。休止にしておけば、いつでも戻れます。
よくある質問
3つ以上の掛け持ちはありですか?
おすすめしません。2つでも、時間割と体力のやりくりはぎりぎりです。3つ目が気になるのは、いまの2つがうまくいっていないサインであることが多いので、先に主と副の役割を見直してください。
副のほうが伸びてきました。入れ替えるべきですか?
入れ替えて構いません。ただし判断は3ヶ月単位です。日単位や週単位の数字は偶然で動くので、その都度入れ替えていると時間割ごと崩れます。3ヶ月見て副が上なら、主と副を入れ替えて時間割を組み直してください。
同じ配信を2つのアプリに同時に流すのはだめですか?
認められるかどうかはアプリごとに規約が違うので、必ず両方の公式の規約で確認してください。規約の問題を別にしても、コメント欄が2つに分かれるため、名前を呼んで返す対応が難しくなります。場所ごとに関係を作るという掛け持ちの利点とは、相性のよくないやり方です。
収入が少しでも、申告は必要ですか?
金額の線引きはここでは書きません。押さえるべき原則は、複数のアプリからの収入を合算して考える、という1点です。自分の場合の要否はいくらから申告が必要かを読んだうえで、税務署に確認してください。
- 掛け持ちは最初に主と副を決める。両方を同じ熱量でやると、両方が中途半端になる
- 時間割は曜日か時間帯で固定する。日によって場所が変わると、どちらの常連さんもつかない
- リスナーには隠さない。ただし配信内での他アプリの告知は規約がアプリごとに違うので必ず公式で確認
- 名前を揃えるとリスナーは行き来しやすく、その分身バレは両方まとめて進む。優先順位で決める
- 収入は全アプリ合算で税務を考える。明細は月1回、1つの表にまとめる
- 配信が義務になったら減らす段階。畳むのは失敗ではなく集約。黙って消えず、精算を確認してから
これから2本目を選ぶ段階なら、配信アプリの比較で時間帯や文化の違いから絞ってください。主のアプリの足場を固め直すには、リスナーの増やし方が土台になります。
始める前につまずきやすいのは、アプリ選びと事務所選びの2つです。どちらも、決めてから気づくと戻るのが大変なところです。
事務所選びを読む始めてから出てくる疑問を、記事にする前に聞くこともあります。
LINEで相談する