ライバー事務所の掛け持ちはできる?|場面別の判断と、黙って始める前の確認
いまの事務所に籍を置いたまま、別のアプリでも配信してみたい。ほかの事務所から声がかかった。歌や声の仕事など、配信とは別ジャンルの依頼が来た。「掛け持ち」を考え始めるきっかけは、だいたいこのどれかです。
検索すると「専属なら禁止」「バレたら大変」といった言葉が並びますが、読めば読むほど、自分の場合はどうなのかが分からなくなります。それで誰にも確認しないまま、こっそり始めてしまう。いちばん揉めるのがこのパターンです。
この記事では、掛け持ちしたくなった場面ごとに、何を確認して、どの順番で動けばいいかを整理します。
場面によってやることは違いますが、最初の一歩はどの場面でも同じです。自分が交わした契約で、それが許されているかを確認する。ネットの一般論ではなく、自分の契約書です。そして、確認しないまま黙って始めることだけは避けてください。
「掛け持ち」には3つの場面がある
ひとくちに掛け持ちと言っても、いまあなたがいる場面によって、やるべきことがまったく違います。まず、自分がどれに当てはまるのかをはっきりさせてください。
| 場面 | 本当にやりたいこと | 向かう先 |
|---|---|---|
| ① 別のアプリも試したい | いまの活動に、もう1つ足したい | 契約とアプリ規約の確認 |
| ② いまの事務所が合わない | 実質、事務所を替えたい | 掛け持ちではなく移籍・退所 |
| ③ 別ジャンルの仕事が来た | 歌・声・イラストなど、配信以外の依頼を受けたい | 契約の「範囲」の確認 |
気をつけたいのは②です。「いまの事務所に不満があるから、別の事務所にも入って様子を見たい」という発想は自然ですが、あとで書くとおり、事務所を替えたいだけなら掛け持ちはたいてい遠回りになります。
また、①と③が同時に来ることもあります。その場合も慌てる必要はありません。確認する場所が「アプリの規約」と「契約の範囲」に分かれるだけで、最初の一歩は共通だからです。
何より先に、いまの契約で許されているかを確認する
どの場面でも、順番はここからです。基準になるのは、世間の慣行でも知り合いの体験談でもなく、自分が交わした契約です。同じ「ライバー事務所」でも、契約の中身は一社ごとに違います。よその人が大丈夫だったことが、自分も大丈夫だという根拠にはなりません。
- 契約書・加入時の規約を読み返す「専属」「他社」「事前の承諾」「配信活動以外」といった言葉を探します。書面を交わしていない場合は、加入時に同意した規約や、当時のやり取りの記録を遡ります。
- 読んでも分からなければ、事務所に聞く「◯◯というアプリでも配信してみたいのですが、契約上は問題ないですか」。相談の形で聞くかぎり、責められるような話ではありません。
- 返事を文章で残す口頭の「大丈夫ですよ」だけで進めないでください。あとから行き違いになったとき、守ってくれるのは記録だけです。
「◯◯というアプリでの配信(または「◯◯というお仕事の依頼」)を考えています。いまの契約で問題ないか、確認させてください。いまの配信の曜日と時間を変えるつもりはありません。」──許可を求める嘆願ではなく、確認の連絡です。この温度で送って構いません。
そして、この確認にはもうひとつの意味があります。聞けない相手なら、それ自体が情報です。「こんなことを聞いたら怒られそう」と感じる関係、聞いてもはぐらかされる関係。それは掛け持ち以前に、その所属を続けるかどうかの判断材料になります。
契約書のどこをどう読むかは契約書のチェック項目に、「専属」という言葉が出てきたときに何を確かめればいいかは「専属」とは何を縛る言葉かにまとめています。言葉の印象だけで「うちは専属だから無理だ」とあきらめる必要はありません。
黙って掛け持ちしない。理由は「あとで必ず揉めるから」です
「確認して断られたら困るから、黙ってやろう」と考える人がいます。気持ちは分かります。ただ、これはおすすめしません。法律の話をする前に、構造の話です。
- 配信は公開活動/声、話し方、配信の時間帯、リスナーの顔ぶれ。隠しながら続けられるものではなく、知られるのは時間の問題です。
- 説明の順番が逆になる/先に話していれば「相談」だったものが、見つかってからだと「言い訳」になります。同じ内容を話しても、立場がまるで違います。
- 信頼の問題として残る/仮に契約のうえで問題がなかったとしても、「黙っていた」という事実は消えません。その後のやり取りすべてに影を落とします。
つまりこれは、バレるかどうかの賭けではなく、見つかったあとの自分の立場を、自分で悪くしておく行為です。堂々とやれる形を先に作るほうが、結局は配信に集中できます。
ひとつ、うっかり型にも触れておきます。事務所に入る前から使っていた別アプリのアカウント、たまに顔を出すゲーム配信、友人の配信へのゲスト出演。本人に隠すつもりがなくても、事務所から見れば「聞いていない活動」になっていることがあります。心当たりがあるなら、指摘される前に自分から伝えておくほうが、話は圧倒的に簡単に済みます。
なお、黙って始めたことが契約違反にあたるのかどうかは、契約の中身と状況によるので、この記事では断定しません。もし「違約金を払え」といった話になってしまったら、その場で応じず、消費生活センターや法テラス、弁護士など、相談できる窓口を先に使ってください。ひとりで判断しないことが大事です。
ここまで読んで、自分のケースが判断できないと感じたら、LINEで聞いてください。
LINEで相談する場面別の動き方:①③は「相談して足す」、②は「やめてから入る」
①別のアプリも試したい場合。契約の確認と並んで、もうひとつ見る場所があります。アプリ側の規約です。
事務所に所属している人の掛け持ち配信について、アプリの側にも定めがある場合があります。内容はアプリごとに違うので、一般論では答えが出ません。やりたいアプリの公式ヘルプと利用規約で確認してください。いまの事務所がそのアプリにも対応しているなら、事務所経由で確認してもらうのが早道です。
事務所への伝え方にもコツがあります。「よそでもやりたい」ではなく、「◯◯を試したい。いまの配信の曜日と時間は変えない」のように、いまの活動への影響まで含めて話すことです。事務所が心配するのは、たいてい活動が分散して共倒れになることなので、そこに先に答えておくと、相談として成立しやすくなります。
そしてこの心配は、実際に的を射ています。配信で効くのは曜日と時間の固定で、掛け持ちを始めると、まずここが崩れます。許可が取れたとしても、いまのアプリの枠は動かさず、新しいアプリは別の曜日に足す。この形を先に決めてから始めると、両方が中途半端になる事態を避けられます。
③別ジャンルの仕事が来た場合。見るのは契約の「範囲」です。契約が対象にしているのが配信活動だけなのか、活動全般なのかで話が変わります。ここは契約書を読んでも自分では判断がつきにくい部分なので、依頼の内容を伝えて事務所に確認するのが確実です。むしろ事務所が間に入ることで、先方とのやり取りが楽になる場合もあります。相談して損はありません。
別ジャンルの依頼を受けるとき、「事務所に確認するので数日ください」と伝えて嫌がる依頼主は、それ自体が危険信号です。まっとうな相手なら、所属がある人への依頼で確認が入るのは織り込み済みです。
②いまの事務所が合わない場合。不満が出発点なら、掛け持ちはたいてい解決になりません。
理由は単純で、同じアプリの中では1人1事務所という仕様が一般的だからです。二つの事務所に同時に所属する形は、基本的に取れません。「別の事務所にも入る」を実現しようとすると、結局いまの事務所を抜ける手続きが必要になります。それなら最初から、やめてから入るほうが早いのです。
- 不満の正体を切り分ける事務所そのものが原因なのか、収入が伸びない時期の問題なのか。事務所を替えても変わらないものを理由に動くと、次の場所で同じことになります。
- やめる手続きを正しい順番で進める報酬の精算など、順番を間違えると損をする箇所があります。動く前に事務所のやめ方を読んでください。
- 次を選ぶ同じ不満が出ない相手かを面談で確かめます。聞くことは事務所の選び方に、移る手順の全体は移籍の手順にまとめています。
「次が決まるまで、いまの所属を保険として残したい」という気持ちで掛け持ちを探していた人は、いったん個人に戻るという中間の選択肢も見てみてください。個人か事務所かで判断材料を整理しています。
なお、「アプリAはいまの事務所、アプリBは別の事務所」という分け方ができるかどうかは、契約と各アプリの定めの両方で決まります。ここも思い込みで決めず、確認が先です。
「ダメです」と断られたときの選択肢
確認した結果、認められないこともあります。ただ、そこで終わりではありません。選択肢はまだ並んでいます。
- 理由を聞く/時間が分散するのが心配なのか、内容が競合するのか。何が引っかかっているのかが分かれば、形を変えた提案ができます。
- 範囲を絞って提案し直す/頻度を限る、ジャンルを限る、期間を区切って試す。条件付きなら折り合える場合があります。
- 契約が切れるまで待つ/契約に期間があるなら、更新のタイミングは条件を見直す自然な機会です。急ぎでないなら、待つのも立派な選択です。
- その話を見送る/いまの所属で得ているもののほうが大きいなら、掛け持ちのほうを断る判断もあります。
- 所属を見直す/どうしてもやりたいことを、いまの契約が許さない。それがはっきりしたなら、正しい順番でやめて動けます。
ここで押さえておきたいのは、断られたこと自体は、事務所の不誠実ではないということです。契約で決めた範囲を守るのは、向こうにとっても当たり前の仕事です。問題なのは、理由を説明しないまま封じられる場合や、契約のどこにも書かれていない縛りをあとから持ち出される場合で、そのときは前に挙げた窓口に相談してください。
「待つ」を選んだ場合は、待ち方にも中身があります。契約の更新時期をカレンダーに入れておく。その日までの配信実績を淡々と積む。外から来た依頼や誘いは、断った場合でも日付と内容をメモに残す。更新の面談で「この半年でこういう話が来ていました」と事実で話せると、次の条件の相談は具体的になります。待つことは、止まることではありません。
よくある質問
黙っていればバレないのでは?
配信は誰でも見られる場所で行う活動です。声や話し方、時間帯、コメント欄の顔ぶれから、思っているより早く知られます。バレるかどうかで考えるより、確認して堂々とやれる形にするほうが、結局は活動に集中できます。
契約書に「専属」と書いてありました。もう無理ですか?
言葉だけでは決まりません。「専属」が何をどこまで縛るのかは契約ごとに違います。専属とは何を縛る言葉かで確かめ方を読んでから、自分の契約書と照らしてください。
事務所に聞いたら、印象が悪くなりませんか?
相談の形で聞くかぎり、普通のやり取りです。黙って始めて見つかるほうが、よほど印象を悪くします。聞いただけで態度が変わる相手なら、それはそれで、その所属を続けるかどうかの大事な判断材料です。
掛け持ちを理由に、違約金を求められています。
その場で払わないでください。まず契約書の該当箇所を自分の目で確認し、根拠や金額に納得できなければ、消費生活センターや法テラスに相談してください。正当な請求かどうかを、自分ひとりで判断する必要はありません。
- 掛け持ちには3つの場面がある。場面ごとにやることが違う
- 最初の一歩はどの場面でも同じ。自分の契約で許されているかを確認する
- 読んで分からなければ事務所に聞く。聞けない相手なら、それ自体が情報
- 黙って始めない。見つかってからの説明は、全部「言い訳」になる
- 事務所を替えたいだけなら、掛け持ちより「やめてから入る」が早い
- アプリ側にも定めがある場合がある。アプリごとに違うので公式で確認する
契約まわりを続けて読むなら、契約書のチェック項目がそのまま使えます。事務所との付き合い方を根本から考え直したくなった方は、ライバー事務所とはから読み直すのがおすすめです。
始める前につまずきやすいのは、アプリ選びと事務所選びの2つです。どちらも、決めてから気づくと戻るのが大変なところです。
事務所選びを読むスカウトDMが来た、契約書を渡された、やめたいのに話が進まない。こういうときは、その場で決めないことがいちばん効きます。判断に困ったら聞いてください。
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